賃貸契約は比較的身近な取引ですが、実は多くの法律やルールが関わっています。通常は不動産業者を介して契約を結びますが、「知人だから安心」「仲介手数料を節約したい」といった理由で直接契約を選ぶ方もいます。しかし、専門家を通さないことで後々大きなトラブルを抱えてしまうケースは少なくありません。ここでは、直接契約の際に起こりやすい問題点を整理します。
1. 契約内容の不備
不動産屋を通さない契約では、契約書が簡略化される傾向があります。口約束やインターネットで入手した簡易的な書式だけで契約を済ませてしまうと、細かい取り決めが抜け落ちてしまいがちです。たとえば「ペット可否」「更新料」「退去時の修繕負担」などを明確にしていなかったために、双方の認識が食い違い、トラブルに発展するケースが後を絶ちません。
2. 家賃滞納や無断転貸
貸主にとって大きなリスクとなるのが家賃滞納です。不動産屋を通せば入居審査が行われ、一定の信用確認がされますが、直接契約では相手の収入や支払い能力を十分に確認せずに貸してしまうことがあります。その結果、滞納が発生し、立ち退きを求めても簡単には解決できません。さらに、借主が無断で他人に部屋を貸してしまう「無断転貸」も起こりやすく、発覚したときには大きなトラブルに発展します。
3. 設備の修繕をめぐる争い
エアコンや給湯器、排水設備などが故障した際、「修理費用は貸主負担か借主負担か」という問題が発生します。通常は契約書や国交省ガイドラインに基づいて判断されますが、直接契約ではルールが曖昧なため、修繕をめぐって揉めることが多く見られます。結果として、借主が必要以上の費用を請求されたり、貸主が修繕を怠ったまま長期間放置されるといったトラブルに発展します。
4. 退去時の原状回復問題
退去の際に最も多いのが「敷金精算」をめぐるトラブルです。不動産屋を介せばガイドラインに沿って公平な精算が行われますが、直接契約では「借主に過剰な修繕費を請求する」「敷金を返還しない」といったケースが発生します。逆に貸主側にとっては、借主が部屋を大きく汚損しても修繕費を請求しにくいなど、双方にとって不利益を招きやすいのです。
まとめ
一見すると「仲介手数料を節約できる」ように思える直接契約ですが、実際には契約不備やルールの不明確さから多くのトラブルが発生します。家賃滞納や修繕問題、敷金精算をめぐる争いは、時間もお金も大きく消耗する原因となります。安心して賃貸契約を結ぶためには、不動産業者を介して適正な契約手続きを踏むことが、双方にとって最も安全で確実な方法だと言えるでしょう。