不動産の売買は、人生の中でも特に大きなお金が動く取引です。そのため、通常は不動産業者を介して契約を進めるのが一般的ですが、中には「仲介手数料を節約したい」「知り合いだから信頼できる」といった理由で、不動産屋を通さず直接売買を行うケースも見られます。しかし、直接売買には多くのリスクが潜んでおり、後々深刻なトラブルに発展することも少なくありません。
1. 契約不適合責任をめぐるトラブル
直接売買で特に問題になりやすいのが「契約不適合責任」です。例えば売主が「シロアリ被害はない」「雨漏りはない」と説明したにもかかわらず、引き渡し後に不具合が発覚した場合、買主から修繕費用や損害賠償を請求される可能性があります。不動産業者を介していれば、重要事項説明書を通じて物件の状況が確認され、一定のリスクは軽減されますが、直接取引では説明不足や誤解が原因で紛争に発展しやすいのです。
2. 代金決済・所有権移転のリスク
売買契約では、売買代金の支払いと同時に所有権の移転登記を行うのが基本です。しかし専門知識がないと、手続きの順序や必要書類を誤り、「お金を払ったのに登記が移転されない」「登記をしたのに代金が支払われない」といった深刻なトラブルが起こり得ます。特に司法書士の立ち合いなしで進めてしまうと、後から取り返しのつかない事態になる可能性があります。
3. 税金・費用をめぐる問題
不動産売買には、登録免許税や不動産取得税、印紙税など多くの税金が関わります。直接売買では、これらの税負担の理解不足から「思った以上に費用がかかった」「どちらが負担するのか合意が曖昧」といった問題が生じがちです。不動産屋を通すことで、事前に費用の見通しを立てやすくなり、余計なトラブルを防ぐことができます。
4. 瑕疵や境界をめぐるトラブル
土地や建物の境界が不明確なまま売買を進めると、後になって隣地所有者と境界争いになるケースもあります。また、古い建物の場合、建築確認や違法増築の有無が曖昧で、買主が予期せぬ制限を受ける可能性もあります。専門家による調査や確認を怠ると、思わぬ損害を被ることになりかねません。
まとめ
直接売買は一見すると「仲介手数料を節約できてお得」と思われがちですが、実際には大きなトラブルを招くリスクが潜んでいます。契約内容の不備や登記手続きの不備、説明不足による紛争は、結果的に多額の費用や時間を失う原因となります。安心して不動産売買を行うためには、専門知識を持つ不動産業者を通じて正しい手続きを踏むことが、最も確実な方法と言えるでしょう。